「洋平君、お疲れ様。」
バイトを終えた洋平がコンビニを出ると、聞きなれた声が呼び止めた。
「ちゃん?どーしたんだ、こんな時間に?」
振り返った先には、やはりが立っている。
「シュート練行くところなの。コートこの近くだから。」 その言葉通り、の手にはボールが収まっていた。
「今日も三井さんと一緒なのか?」
「ううん。今日は1人。良かったら洋平君も行かない?」
1人で行くのが寂しかったが洋平を誘うと、洋平は優しく目を細める。
「じゃあ、付き合うよ。」
片手には松葉杖、もう片手にはボールという動きにくそうなは、
なんとも器用にボールをつきながら歩き、洋平を感心させたのだった。
―― 1時間後 ――
一日の目標を達成したは、洋平と並んでベンチに座り、今日の花道の事を話していた。
「―――――――――― だからね、明日も元気なかったら困るな〜って思って・・・。」
「大丈夫だろ、あいつ寝たら嫌なこと忘れてるって。」
本気で悩んでいるの背を、ポンポンと軽く叩き、笑う。
そこで、洋平はふと疑問がわいた。
「花道が落ち込むほどの質問ってなんだった?」
「・・・・・それが、初めてのキスについてで、したことあるかって聞いたら
桜木君黙り込んじゃって・・・。」
の言葉に、洋平は驚き次の瞬間笑い出した。
「そりゃ、落ち込むな!」
「あっ!洋平君も答えてみる?」
「俺?聞いてどうすんの?」
急な申し出に困ったように笑う洋平に、は悪戯っぽい笑みを向ける。
「面白そうでしょ?じゃあまず、キスはしたことありますか?」
「・・・・・ちゃんは?」
「!?」
の顔から笑みが消えた。
洋平の声は少しかすれ、さっきまでとは別人のよう・・・
「は・・・したことあんの?」
呼び捨てにされ、恐々洋平を見ると、そのまま視線がそらせなくなる。
2人の間の空気は甘く重くなっていく。
「ひ、ヒミツ!!」
その空気を振り払うようには勢いよく立ち上がった。
「か、帰るね、きょ、今日はありがと!!」
は洋平の返事も待たずあわててコートを出て行った・・・・・
「なに〜?さっきの洋平君・・・なんか、局地的フェロモンでてた・・・。」
困惑するの頬は熱を持ち、なかなかおさまらないのでした・・・。